その翌日の午後四時、わたしたちは東京郊外のある町に立っていた。

“わたしたち”というのは、わたしと凪、そしてお父さんとお母さんだ。

「ここら辺に『ひまわり保育園』ってありませんか?」

凪は目的の駅まで来ると、駅員さんやタクシーの運転手さんに聞きまくった。

あの手紙の差出人・玲美さんは、手紙に住所を記していなかった。
消印から住所のあたりはついたけれど、詳しい住所までははっきりわからない。
凪が読み取ることができた周囲の風景や、華ちゃんが通っているであろう保育園の名前だけが頼りだった。

それだけの手がかりでお兄ちゃんたち家族を見つけられるかどうか保証なんてなくて、本当に賭けのような気持ちだった。

「あった!」

駅の近くにあった新聞配達所で聞いた情報を元に、住宅街に向かって十分ほど歩いたところで、凪が声を上げた。凪の指差す方には、まだ新しく壁がつやつやとした保育園があった。

壁にかけられた看板を指差してわたしは言った。

「ほら、ひまわり保育園って」

「本当にあった……」

二度目ではあるけれど、やっぱりどこか半信半疑でついてきたわたしは思わずそうつぶやいた。

お母さんも驚きを隠しきれないようだった。何度も凪の顔と保育園を見ている。

お父さんは黙って、にらみつけるように保育園を見ていた。お兄ちゃんとの再会が現実味を帯びてきて、緊張しているのかもしれない。

「保育園を見つけたはいいけど、ここからどうするかだよね」

「保育園の人に聞き込みしてみる?」

「個人情報だよ。そんな簡単に、教えてくれるかなあ」