終業式だったこの日、わたしは自分の家を通り過ぎ、凪の家まで一緒に帰った。どうせこの時間に帰ってもお母さんはパートでいない。

「ただいま」

「お邪魔します」

凪のおじいちゃんの家は、昔から続いている農家だ。
大きな平屋で、全てのものが古いけれどよく磨き込まれている。

夏はすべての部屋のふすまが開け放され、家全体が大きなひと部屋のようになる。
その風通しのよさ、古い家特有のひんやりとした空気感……、夏を過ごすには最高の家なのだ。

居間になっている広い和室には庭に面した縁側がある。
子供の頃からそこで作業するおじいちゃんに見守られながら、凪と一緒に遊んでいた。たくさんの思い出があるこの家は、わたしにとっても自分のおじいちゃんの家のような安心感があった。

凪の後について、台所に向かうと、おじいちゃんが大きな鍋にお湯を沸かしていた。

「おかえり。暑かっただろう」

台所にいた凪のおじいちゃんが、出迎えてくれた。

おじいちゃんって言っても、まだ六十代で現役ばりばりのおじいちゃんはパワフルでかっこいい。
わたしも子供の頃からずっと可愛がってもらっていて、大好きなおじいちゃんだった。

「くるみちゃんも来ると思って用意してたよ」

その言葉に「おじいちゃん、ありがとー」とはしゃいでしまう。

古くてどっしりしたテーブルにはすでにいくつかの食器と分厚いだし巻き卵が並んでいた。

「あ、素麺?」

それらを見て、凪には昼のメニューがすぐにわかったらしい。

「僕、ゆでるよ。暑いじゃん」

「いや、凪は大葉をつんできてくれ」

「わかった」

凪は身軽に台所の勝手口からサンダルをつっかけて庭に出ていく。

「おじいちゃん、わたしも手伝う」

「じゃあ、この野菜を切ってもらうかな」

「オッケー」