いっそ彼女達の望む悪者になってやろうか。
と沸点を通り越した頭にごちゃごちゃと嫌な思考ばかり渦巻いていた。
『────ハル、網持ってきたぞ』
その時、戻ってきたアオの淡々とした声に射抜かれた。
私の溢れかえる黒い感情全てをかっさらうような怠そうな声に、そちらに顔を向けた。
『、』
「・・・・・・アオ」
アオは私の顔を見た瞬間、眉間にシワを寄せ、真っ黒な瞳だけで彼女達を射抜く。それでも彼女達はアオのために用意した仮面を被って、言い訳を始めようとする。
『あ、青井くんあのね鍵が見つかって、』
『そんなことはどうでもいい』
『・・・え?』
怒りを抑え込むアオの声。それでもその低音から怒りが溢れ出るように滲み、安田さんの声が震えた。
アオは黙ったまま、私の元に来る。その手には網が2本。たったそれだけに、堪らなく泣きそうになる。
『ほら、早く上がって』
「・・・アオの手が汚れる」
『え、なになになに。池で滑って頭打った?ハルが遠慮とかきもい』
「うっるせーばーか!」
差し出された手に、相変わらず言いたい放題のアオに、私は思わず笑いながらつっけんどんな返事をしてその手を取って池から出た。