パチ、
たった2人だけの呼吸の音と、アオが漫画のページを捲る音。
それとアオが不定期にパチ、と風船ガムを膨らませては割る音だけがアオハル部の部室に時の経過を知らせる。
余りにも夢中になり過ぎて喉がカラカラになっていたのを唾を飲み込んだ時の軽い痛みで自覚する。
双眼鏡を瞳から離し、窓から離れて部室内へと振り返る。
「喉乾いた」
『へー』
「可愛いJKが喉乾いたっつったら普通飲みモン買ってくるだろ」
『落ち着け。この場にメスゴリラはいても可愛いJKはいねえ』
アオハル部の部室は部室棟の2階、1番奥。グラウンド側の窓の下には私専用の椅子が1つ。
そこに座って窓枠に身を乗り出し、双眼鏡で野球部のエース、3年の勝部 大地先輩を見ることこそが私の青春そのものである。
ここ以上に勝部先輩を見つめられる絶景を私は知らない。