『鍵が確実にあったのは何処まで?』
アオが話した時にふわりと彼の髪からシャンプーの良い香りが私の鼻に届く。思わずアオのさらさらな黒髪を1束を指でいじる。
『えっと、帰りのSHRではあったし、その後校内を友達とふらふらして、最後に校門を出る所でないのがわかったから、学校内には絶対あると思う』
『鍵になんか付けてる?』
『ううん、何も』
アオは私にされるがままで特に何も言ってこない。手首に付けっぱなしだった髪ゴムでアオの髪を一部だけ結ぶ。
その時に安田さんの左隣の女の子とばっちりと目が合った。私が微笑む隙も与えられずにわざと逸らされる。少しの険悪感を顕にして。
『鍵、どこにしまってたの?』
『ジャケットに入れてたよ』
『え?なんでそんなとこに入れとくの』
アオの容赦のない言葉にあからさまにしょぼんとする彼女達。こいつは素でぶつけているのだからタチが悪いのだ。
『か、帰ったらすぐに鍵を取り出せるように、』
『そんな手間省いても失くしたら意味無いじゃん。鍵になんか付けて落とした時に気づけるくらいの重みあるならまだしも』
アオは淡々と言葉を続ける。こいつは本当に男女平等に容赦ないが何故か今日は一段と彼女たちに冷たい気がする。思春期か?反抗期か?クール系か?どれも似合わない。