『あのー、依頼いいですかあー?』
その声はやけに猫なで声だった。
今日も今日とて私は勝部先輩に、アオは真奈美ちゃんに思いを馳せていた。が、その猫なで声に、突然の第3者の登場に、2人で驚いてそちらを向いた。
『あ、安田さん』
『青井くん、やっほー!』
ソファーに寝転んでいたアオが少女漫画を置き、彼女を見て特に感情もなく呟く。
それに彼女は嬉しそうにアオに笑顔を向けて、手を振りながら部室に入ってきた。その後ろには2人の女子生徒。
私はすぐに双眼鏡を下ろして、膝立ちしていた椅子にそのまま腰掛け彼女たちを見つめる。
『依頼、いいかなあ?』
『取り敢えず座って』
『ありがとう!』
アオは2人掛けソファーから降り、ちょんちょん、とそこを指差す。そして私の元へ来て無言のまま私を蹴飛ばし、椅子から落とすとその椅子を持って、2人掛けソファーの横に置いた。
「ちょっとぉおお!どいてって言えばいいじゃん!」
『どいて』
「遅いから!」
アオは床に倒れ込んだままの私を見下ろし、面倒そうに顔を歪ませて舌打ちを散らすと、さっさと1人掛けソファーに座る。