「・・・アオ?何してんの」
体育館に向かう途中、長袖長ズボンのジャージ姿のアオの後ろ姿を見掛けて声を掛ける。
振り向いたアオは私の半袖短パン姿に心底げんなり顔をして、無表情のまま告げる。今日もとてもお綺麗な顔の無駄遣い。
『いや別に?』
「別にって、早く体育館行かないと遅刻するよ」
『あー・・・、ジャージに着替えてこようかなって』
「もう着てんじゃん」
チィ、と舌打ちをしたアオ。彼に近づき腕を引っ張って体育館に向かおうとする。
私も髪ゴムを忘れて取りに行っただけなのでなるべく早く行かないと体育教師に叱られる。
『え?何、どこ行くの』
「体育館に決まってるでしょ」
『やだやだやだやだ行かない行かないむりむりむり休む!つーか保健室行こうとしてたんだよ離せ』
体育館というワードを出した途端、慌てて急ブレーキをかけて騒ぐアオに怪訝な顔で振り返る。
私の顔を見て、溜息をついたアオは腕を離せと言わんばかりに顔を顰める。
「具合悪いの?」
『うん、まあ』
「嘘でしょ」
『う、嘘ついてねーよ。お、おっ、俺の何処が嘘ついてるって言うんだよ』
「アオが嘘つく時に下唇が出るの気づいてないとでも思ってんの?」
完璧に私に言いくるめられたアオは白目のまま体育館に引き摺られるように連行された。