真っ直ぐと私を見つめてくる戸島先輩の瞳の奥は微かに怯えを孕んでいるように見える。私は首を傾げながら素直な気持ちを吐露する。
「お似合いだと、思いますけど」
『・・・そう。疑ってごめんね』
「全然大丈夫です。あの、何かあったんですか?」
私から視線を逸らして微かに俯く戸島先輩を今度は私が追い掛ける。それでも戸島先輩は私から視線を逸らしたまま、だけど、ぽつり、と言葉を落としてくれる。
『李寅くんに、嫌われたくないだけなの』
「え?」
『・・・どうして私に告白してくれたかもわからなくて、聞く勇気もないし、それに私って・・・変でしょ?友達も少ないし』
困ったように唇を持ち上げる戸島先輩。戸島先輩の言葉を聞いている時、デートの相談に来た遠山先輩の必死な姿がフラッシュバックする。
『李寅くん人気あるし、尚更なんで私なのかなって』
遠山先輩は間違いなく戸島先輩にベタ惚れだ。そんな2人が要らぬ心配で絡まりあってるなんて勿体ない。
「別に無理に聞けだなんて言いません。でもやっぱり遠山先輩がどう思ってるか1番わかるのは遠山先輩自身なわけで、」
素敵な、そしてとっても贅沢な悩みだなと思いながら、ぐーんと伸びをして、青空を見上げ言葉を繋げる。戸島先輩がやっとこちらを向いた。