『その人が悩んで悩んで悩んでそれでも解決出来ずに持ち込んでくれた相談や依頼を簡単に処理しちゃう完璧な人なんて、いる?』
くつり、とわざとらしく小馬鹿にしたように喉で愉しそうに笑うアオは余裕たっぷりで。本当に先ほどまで『犬』を書いてた奴は何処に消えたのか。
『俺達は“解決できるような人”じゃないことを誇りに思ってるよ。だってそれは、その人と同じ立場にたって、共有した上で一緒に解決に向かう手助けをできると思ってるから』
アオは自分を見つめて固まる私と目が合うと、ふ、と弱ったように笑う。そのまま私の肩をぎゅ、と抱き寄せた。そこで小さな悲鳴が各々から火事のように燃え上がる。
『確かに始まりやきっかけは大それたものじゃないし、自慢できるような優美さもない。でも俺達が成そうとしてきた事に対して嘘はないよ』
黙って、アオの言葉に頷く。その通りで、その言葉のとおりで、やっぱりアオがアオハル部にいてくれてよかったと、心から思う。
『馬鹿にされたって貶されたって俺達に救われたって笑ってくれる人がいるなら、それで充分だから。“その他大勢”はどうぞお好きに』
にっこり、と最後にアオが微笑むと生徒会の子が我に返ったようにマイクを受け取りに来た。拍手を受けながら司会の言葉に従って舞台袖に戻る。