「・・・・・・あ。」
にかっと、ほんの少し照れくさそうに白い歯を見せて大きく笑う、真っ直ぐで綺麗で優しい、“あの頃”よりも幼さが抜けた、それでも屈託のない笑顔。太陽のように笑う女の子。
きっと彼女が投げたのだ。でもそれは俺に向けたわけじゃなくて、間違えてしまったから俺にはにかんで謝った。
視線をそらせずにいる俺とは違い、彼女はすぐに野球部の方へ視線を向けて、誰かを必死に目で追っては、頬を染めて幸せそうな顔をする。
俺は紙飛行機片手に、彼女の視線を辿る。そこには必死に汗水流して、土にまみれて、ボールに食らいつく大柄の、勇ましい、俺とは正反対の男。
「・・・マジか、」
俺が今まで彼女に抱いていた気持ちを、彼女は他の誰かに注いでいた。
あまりにも唐突な再会に、猛スピードな失恋に頭が追いつかず、俺は暫くそこに立ち尽くす。時々彼女を見上げては、もう俺など見向きもしない姿に、ギュ、と胸の奥底が初めて締め付けられた。