『・・・アイツ、なかなか辞めねえよな』
『空気読めよな。調子乗ってんだよ、ふざけやがって』
『レギュラー入りして女子にもモテるから、俺らのことゴミだとでも思ってんじゃねえの』
『うわあ、ぶん殴りてえ』
『お前はもう殴ってんだろ』
品の欠片もない大きな笑い声。まるでお笑い番組を観てるように楽しそうに、それでもどこか歪んだ笑い声。
そこで、俺は全く動けなくなって、頭が真っ白になる。
いつか頑張れば、あと少し努力すれば、きっと、もうすぐ─────・・・、
いつかっていつ?
あと少しってどれくらい?
きっとって、いつまで?
俺、なんでこんな思いしてるんだっけ。
俺なんか悪いことしたっけ。
どうして、俺なんだっけ。
涙が零れ落ちることなんて、たったの一度もなかった。俺はただただ、毎日毎日切り刻まれる胸の穴に、真っ黒になるそこに、大好きな父親との野球の記憶を必死で上塗りしていた。