『なんか今日先輩達ピリピリしてたよな』
『大会もうすぐだからじゃん?なあ、紫春』
「え?あ、ごめん、ぼーっとしてた」
『おーいーっ!浮かれてんじゃねえよ』
空元気で笑って同じ1年の部員友達と言葉を投げ合った。大丈夫。俺には1年の仲間が、友達が、ちゃんといる。
着替え終えて駐輪場まで岡本達と歩いていれば、同じクラスの女子に声を掛けられてそれに素直に答える。
『青井くんだ。ばいばーい』
「あ、ばいばい」
『ばいばいだって!青井くん可愛い』
『青井くーん、ばーいばーいっ!』
「うん」
『ほらー、照れちゃったじゃん』
きゃっきゃ、はしゃぐ女子達に特に何も思わず歩みを進めていた。いきなりありったけの力で肩を叩かれて、噎せながらむさくるしい奴等を睨む。
「いてーな」
『お前ずりーぞ!女子に人気なんてふざけんなよ』
「別にそんなんじゃねーよ」
『嘘つけ!青井が3組の高崎さんに告白されたって噂になってんだからな』
「あー・・・それは、別にあれだって」
『あれってなんだよ』
「やっぱそれ」
『それってなんだよ』
「なんだろう」
『おい!』
俺の言葉に皆が笑いながら俺にのしかかってくる。それに苦しくて叫びつつも、友達のおかげで今日の先輩の出来事を一瞬でも忘れることができていた。