その喜怒哀楽何も無い表情は、端整、たったそれだけで成り立っているようなものだ。
暫く見つめられていたが、青井の睫毛が微かに震えて、瞬きが3度繰り返された時、彼の表情が何かを悟ったように変わった。
『──・・・・・・真奈美ちゃん』
その躊躇いを孕んだような掠れた声は、西日を背景にして悲しげに微笑む彼には正直とても似合っていた。
「え?真奈美ちゃん?誰それ。」
『後で見せるよ』
「可愛いの?」
『世界1』
「うわ、ベタ惚れじゃん。勝算は?」
『今のところ皆無かな』
「ふーん」
開き直ったように、迷うことなく簡単に言葉を繋いでいく青井を見つめていれば、私の視線に気づいた彼がこちらに顔を向けて、ふわりと微笑んだ。
『まあまあ、当て馬同士頑張ろうよ』
「私は馬じゃない」
『奇遇だね。俺も馬じゃない』
その日、偶然にあの場に居合わせて、あの状況に陥って、たったそれだけ。私たちの出逢いなんてそんなもの。