窓枠の上に乗せた腕に顔を埋めて自分の中に籠る。そんな私に間を空けてからアオの大きくて優しい手がくしゃり、と私の髪を乱すように乗せられた。
『─────それだけは、言いたくない』
「・・・やっぱり糖尿病にする気でしょ」
『ねえどこでどうなったらそうなるの』
「普通に」
『ハルの普通怖い』
アオの全てを知っているようできっと私はアオのことを何一つ知らない。それがやけに胸に刺さって、でもそれを素直に吐き出せるほど素直でもなくて。
『だから、今後のアオハル部についてはハルがハルのペースで決めればいい。俺はハルが決めたことに何も言う気はない』
「アオってぶっ壊れる時あんの?」
『え、どういうこと。何いきなり』
「ガソリン漏れて爆発したりしたいの」
『待っていつから俺機械認知されてたのアイアムヒューマン』
「きもい」
『うるせえ』
もうこれ以上、アオに離されるのは御免だ。それなのに、縋り付いているくせに、前を歩くアオが振り向いてわざわざ私のために戻ってきてくれるのも、御免だ。
私は私でちゃんと自分の足で歩いてアオの隣に居たいのに。
アオの手が頭に乗っかったまま、溜息を自分の腕に馴染ませる。それにアオはほんの少し躊躇ったように手を止めて、何事もなかったかのようにくしゃりくしゃり、と私の髪を2度、荒らした。