夏子は何気なく私に事実を告げて、椅子から立ち上がると「帰ろう」と私に笑って見せた。私は頭の中に絡まって絡まりきって、何処が何処に繋がっているのかわからない糸をそのままにして、立ち上がった。





『紫春、クラスのクリスマス会来いよーお祝いしてやるからさー!』

『ごめん今日パス』

『青井、じゃあこっち来いよ。俺らと食い放題行こ!』

『先約あるんでパス』





隣のクラスに行けばアオが教室の前に立っていた。制服姿にマフラーを巻いて寒そうにポケットに手を突っ込んでいる。


夏子は他の友達と予定があるらしく、私達に手を振って去っていった。




「おまたせ」

『めっちゃ待ったー』

「どれくらい?」

『5分くらい』

「みじか!」





寒そうに私を見下ろしたアオは私の頭を鷲掴みにして、ミシ、と力を込めてくる。頭を潰されそうになってもがけば笑われる。



「いった。女の子にこんなことするなんて信じらんない」

『ハルは女じゃないですぅー』

「うるせえばか。てかさ、いいの?たくさん誘われてたのに」

『あー、いいのいいの。ハルと先に約束したもん』




2人で下駄箱まで歩いている途中も、アオは声を掛けられては適当にあしらっていた。アオ、こんなに人気だったっけ。





『あ、そうそう。ゲルゲドンさ、3Dもあるらしいよ』

「え!そっちのがいい」

『だよなー、ゲルゲドン触りてえなー』

「絶対もふもふだよねえ」

『いや、もふもふなんてもんじゃねえだろ。もう、ふわっ、とろっ、だろ』

「オムライスかよ」





くだらない話をしながら電車に乗って、とにかくひたすら尽きない話。しかも全てが全て至極どうでもいいことばかりで、明日には忘れてしまいそうなことばかり。