女子生徒はゆっくりと顔を上げ、青井と視線が交わった瞬間、わかりやすく頬を染め上げた。
しかしすぐさま唇をキュ、と結ぶ。僅かな青井の変化に。
恋、してるんだ。と彼女の表情に自分の胸がチクリ、と痛んだ。
『気持ちは嬉しいんだけど、ごめんね。俺、好きな人いるから』
青井の飄々とした素振りに、淡々とした言葉。
告白の返事にしては無慈悲そのもの。
それなのに女子生徒に余程の傷を与えたようにみえないのは、よっぽど彼女よりも奴の方がまるで失恋したような顔だからだ。
『・・・青井くんの、好きな人って、』
無意識のうちに零れたような女子生徒の声。
青井は億劫そうに黒目を動かし、彼女の瞳の奥を見据える。その瞳は冷たくて、まるで静かな怒りを帯びているようだ。
ただでさえ表情を読み取れないような気だるさを纏っているのに、とことん厄介な男だ。私は無意識に眉間にシワが寄る。
『あ、ごめんなさい、違くて』
『なんで謝るの』
『あ、いやその』
『悪いことしてないのに謝る必要ないでしょ』
びく、と彼女が本能的に肩を上げた。その隙に青井はくるりと表情を変えて、溜息混じりに微笑を零す。