『あ、ハルが俺ん家に住めばいいよ』
「あーそれは楽かも・・・じゃないよ馬鹿か」
『え?名案じゃね?』
「それけっこ・・・、」
『ん?』
「なんでもないもう2度と話しかけないで」
『罪重ッ!』
アオは何気なく言ったのに、気にした自分が尚更恥ずかしい。私ばっかり。
心を鎮めるためにアオから顔を逸らし、故原くんと夏子を眺める。2人も私達と同様、開場を待っているのだが終始楽しそうだ。
『ハルー』
返事なんかするもんか。
『ちょっとハルちゃーん』
そうやって甘ったれた声も無駄。
『ハールさーん』
うっるさいな絶対返事なんかしない。
『はるりん』
え。きもい。
三つ編みにした私の髪をくいくい、と引っ張りながらそっぽを向く私にアオが声を飛ばしてくる。まだ心が落ち着かないので取り敢えず無視だ。
私に無視されたアオがどんな顔をしているのかわからないが、暫く髪を引っ張ったまま無言になった。
『───────・・・青海』
「!」
『あ、こっち向いた』
優しげに呼ばれた私の名前。思わず我を忘れて振り返れば、私が振り向いたことに少し驚いた顔をするアオと目が合う。
「・・・な、なん、」
『あ、開場した。行こ』
視線を私の後ろに向けたアオは私の横を撮り抜けながら、私の服を軽く引っ張る。結局それはきっとアオの気まぐれなのだと自己完結して、何食わぬ顔を作った。