紅葉も落ち切って、空気が冷たさを増して肌を刺激する季節になる。
『雅史、さむーいっ!』
『俺も。あ、俺のマフラー取んなよ』
『ふふ、雅史の匂いがするー』
『やめろよー』
この時期になると、いや、そのイベントが真っ只中になると自然と成立したカップル達がこれみよがしに街中を徘徊する。
そしてそれに伴いアオの機嫌が元気に悪くなる。
『聞きました?何あれ。なーにがマフラーきゃっふうだ今すぐ呪われろちくしょう』
「最低だな」
『え?だってムカつくじゃん。俺こんな寒いのに』
「改めて最低だな」
今日は出先だが、最近は校内でもアオは帰り道や廊下、教室などでイチャイチャする男女を見掛けると顎を突き上げて舌打ちを繰り返す。
私が痛快に失恋してから、もう早くも2週間以上経っていた。それなのに私は相も変わらず、勝部先輩を眺める日課をやめられずにいる。
アオもそんな私を止めることはしなかったし、ただただ黙って少女漫画をいつも通り読んでいた。
「そんなんだったらアオも彼女作ればいいじゃん」
『ぶぁわーか、彼女とは作るもんじゃなくて結ばれるものなんですぅー』
「じゃあ結ばれればいいじゃん、真奈美ちゃんと」
『馬鹿野郎それは完璧に脳内で出来上がってるわ』
「きめぇ」
『あぁ?』
私が何か言い返そうとした途端、がばっとアオの大きな手によって口が塞がれる。