【山吹先輩、森さん現れました!】
そう連絡を入れれば、不意にブチン、と放送室のスイッチが入る。ガサゴソとクラス中の皆が今朝担任が来る前に配られたそれを机の中からこっそり取り出す。
全校生徒分、アオハル部2年分の部費を今日1日に消費した。
《それでは皆さん、グランド側の窓を開けて私の掛け声に合わせてお願いします》
『は?はあ?』
山吹先輩の放送の声に、全員が普通なら有り得ない状況に水を得た魚のようになる。刺激のない退屈な授業を放棄してグランド側の窓を開けて全員が1つ手に握るそれを準備する。
《いきます。3、2、1、》
「もぉおおおおりぃいいいさぁああんっ!!!!」
私の最大声音にグラウンドを歩いていた森さんの肩がビクッと上がり、折り曲げた腰のままゆっくりと振り返る。
そして山吹先輩の掛け声が0になった瞬間、全員がグランドを1人で歩く森さん宛にクラッカーを鳴らす。
──────────ドッパァアアアン!
全校生徒が一斉にクラッカーを鳴らせば、それはそれは物凄い音になる。
その音にビクウッと身体を飛び上がらせた森さんは、その光景に固まりつつ首を傾げる。それはそうだ、全校生徒が窓から身を乗り出して自分に手を振っているのだから。