「森さんがいなくなっちゃうことがみんなが知らなくて当たり前、いつの間にかいなくなってた、なんてことにはさせたくない。森さんのことなんてどーでもいい人もいるかもしれない」
その迷いのない瞳には、迷いなく答えなきゃいけない。
「でも、どーでもいいにしたくない。」
アオは私の眼光に、呆れたように息を吐き出すと視線を落とした。
『やるんだったら、本格的にやらないとつまんないだろ』
「え?」
『送り出すんだろ、大切な人』
アオは顔を上げて私に微笑を零す。2人でもう1度ソファーの背もたれにばふっと身体を預けながら明日の作戦を練った。
迎えた翌日は11月にしては暖かく、お日様がよく差し込む昼寝時だ。
それにも関わらず、5限目に寝ている者は後で生徒会とアオハル部から「グラウンドの中心で愛を叫ぶ」の処罰を受けるため、誰1人寝ている生徒はいない。
そんな通知が生徒のみに知れ渡っているなど知らず、多くの生徒が睡眠時間になる5限目に真面目に起きていることにきっと先生達はさぞかしく喜んでいるのだろう。
私の最初で最後の頼み事に設楽会長はアオにはブチ切れながらも多少無茶なそれになんとか承諾してくれた。
教室の窓から校門に向かってグラウンドをとぼとぼ歩く後ろ姿を見つけ、慌てて机の中でスマホを操作する。