『はーいちょっとごめんねえ、俺の友達返してねえ』
なんて年齢層問わず群がる多くの女性を掻き分けて、中心で殺されそうになっているアオを故原くんが引っこ抜く。アオはしくしくしながら故原くんに抱きついた。
『メス怖いメス怖いメス怖い』
『女の子ね』
『違うあれはハイエナのメスかスーパーセール品に群がるメス』
『どっちにしろメスになってるじゃん』
そうか、アオはとんでもなく美男子だったのか。残念過ぎる性格で忘れていたが、それが許されるのもやっぱり超絶なるイケメンだからなのだ。私は許さないが。
『あっ!ていうか平野ちゃんも春井ちゃんもナース姿なんだー!かわいいーっ!』
「えへっ、えへへへ、でへええそうかなあえへえ」
『血塗れナース可愛いって言われても微妙』
故原くんの言葉に正反対の感想を述べる私と夏子。そこにアオの声が飛んでくる。
『いや平野さん可愛いよ。ハルは返り血浴びた後みたいでやっぱり何人か殺ってるんだなって実感した』
「さあて、アオの返り血はどこに付けようかなあ」
『ぎゃあああやめてやめてやめて』
アオの胸ぐらを掴んだところで改めて気づく。
アオも故原くんも爽やかな白いワイシャツに黒ベスト、細身の黒パンツに黒のロングタイプのサロンエプロン。喫茶店のウェイターまんまでお似合い過ぎてうがうがする。
胸ぐらを掴んだまま、アオのそんなお似合いドストレートの服装を見つめる。
今日は普段のさらさらなままとは違って大人っぽく決められた髪型がかっこよさを際立たせていた。
顔を上げた先、近い距離で目が合うとアオはふんわり確信じみた笑顔で私に囁く。
『───・・・ハル、惚れた?』
私は黙ったまま取り敢えずアオの首を締めた。