「あの2人は?」
『平野さんが体育教師に怒られるのは御免だって先行ったら拓人もそれに着いてった』
「アオも行ってよかったのに」
『体育は極力やりたくない』
2人でてれてれと体育に向かう道を歩きながら、私が髪ゴムで髪をひとつに束ねていればアオは私のポニーテールで遊び始める。
「やめて」
『馬のしっぽー』
「やめろいじるな」
アオは私が髪を結ぶのに両手が塞がるのをいいことに私の髪の束を弄っていた。
ふわりと1束すくいあげると腰を屈めてすんすん、と匂いを嗅ぐ。とても、自然にそれをやってのける正真正銘の変態。
『ハルの髪の毛は女の子の匂いすんだな。髪の毛は女の子だな、髪の毛は』
「嗅ぐな触んなうっざ、生粋の美少女なんですけど」
『ああああおまわりさーん、今すぐ鏡をここにぃいいー・・・!』
髪を結び終えた空いた手で取り敢えずアオを殴れば珍しく躱される。むかつく。
「勝部先輩が同い年だったらこんな感じになれたのかなーッ、」
殴ろうとして空振りで終えた私の手首がアオの大きな手にギュッと掴まれてそのまま私の身長を考えずに持ち上げられる。
そのままの感情で特に意味もなくアオに言葉をぶつけただけなのに、無表情で朗らかだったアオの顔がぴく、と固まった。