夏の暑さを忘れて冬が始まる束の間の秋。登校中に通る並木道も紅葉が綺麗に緑から少しずつ染め上がっている。
「アオー、体操着貸してー」
『あー?忘れたの』
「うん」
人生17回目の秋は特に感動することもなく。秋だなとしか思わなくなったのは経験が物を言うのか、それとも初心を忘れたからか。なんて考えるのも2秒ほど。
次の体育の授業で体操着を忘れた私はそれどころではなく隣のクラスのアオに顔を出す。
アオ達も体育なのだが、そんなのお構い無しにアオから体操着を剥ぎ取ろうとする私。そんな私に慣れているアオは溜息を着きながら後ろのロッカーに向かう。
私も教室に足を踏み入れアオの後ろをついて行く。その時に安田さんと目が合う。あの時のことが頭を過ぎりながらも笑顔を向ければ逃げるように視線を逸らされた。