『──────なんでハルまで止めたの』
その遠慮のない、冷たさのある言葉。私は返事が返せず黙ったまま、とにかくアオから目を逸らす。
『俺がああいう事すれば教室に入ってきてからずーっと島田さんを見てた林田がこうするのは目に見えてた』
机の上に座ったまま、私を見ずに淡々と事実を告げていくアオ。
『俺もそこまで考えないでやるほど馬鹿じゃない。それに本当にするつもりなんて微塵もなかったし』
アオの横顔を盗み見ると、目線を少し落としていた。だがその横顔が私の方に向きそうになったのを微かに察知し、慌てて顔を背ける。
『ハルならわかってると思ってたけど──・・・なんで“あんな顔”して止めたの』
最悪だ。こういう時なんて言えばいいのかなんて全くわからない。大体これに答えなんかない。だって自分でも気づかずに動いていたのに、それをそのまま言えるわけない。
こんがらがった頭のままアオの話を聞き入れていたが、返事をする頭まで働かない私は眉間にシワを寄せたまま黙り込む。