『島田さんの好きな人って、林田?』


『えっ!ど、どうして!』

「そうなの!?」






大きな反応をしそうになる私と南ちゃんをシー、と甘く微笑んだまま唇に人差し指を当てたアオ。


穏やかな表情のままくすくす笑うアオは何処か楽しんでいる。そうしてちらりと視線を南ちゃんの後ろに逸らしてすぐに戻す。








『───俺をダシに使ったでしょ?』




その挑発的な視線は掴み所がなくて魅力的だ。アオの楽しそうな言葉に南ちゃんはびくっと肩を上げ、気まずそうな顔をする。




『俺に肩を置いて甘い言葉吐き捨てたのは、ゴツイ系代表の林田が教室に入ってきたのを声で気づいたから、でしょ?』








なんだこいつ、化け物かよ。とアオを見つめる。口の端を持ち上げて愉しそうに笑うアオに苦し紛れに視線を逸らす南ちゃん。






どうしてアオはダシにされたと自覚しながらもこうして自ら南ちゃんに近づいて、更に利用されるようなことを望んでしているのか。






『そういうの、俺きらいじゃないよ。何が何でも林田に見てもらいたいって気持ち、俺もわからなくない』

『・・・ごめんね』

『違う違う。協力してあげよっか、って話』



その突拍子もない台詞に思わず私が無意識に反応してしまった。



「え?」




アオは甘く微笑むと戸惑う私と南ちゃんを置き去りにして、南ちゃんの腕を更に引き、距離を縮めると南ちゃんの髪を優しく撫でて顎に手を当てた。