「お土産ぇえええええ・・・!」
『タダで渡すわけねえだろ。ほら“アオくんお土産ちょーだい”って両手ほっぺに当てて懇願しろよ』
「は?」
『やっだあハルちゃんったら好きなだけ持ってきなって!』
「わーいっ!チョコあるチョコ?」
『この暑さで溶けんだろ考えろよ馬鹿か』
ギャンギャン言い合いながら袋から沢山お土産を取り出す。どれもセンスが無さすぎるし、無難なお菓子というセレクトを1つもしないアオのお土産は正直貰っても全部嬉しくない。
「ねえこれは食べ物?」
『ちげえマトリョーシカ』
「いらな」
『お前覚えてろそれ夜中にハルの部屋までマトリョーシカ歩きで呪いに来るからな』
「何マトリョーシカ歩きって」
『わかんない』
結局、どれもこれも正直いらなかったけど。そんな私にキレながら泣くのを我慢するアオがさすがに可哀想になったのでマトリョーシカをもらう。これは玄関の靴箱の奥に封印する。
『ハルさっきどっか行こうとしてなかった?』
「・・・外の空気吸いに行こうとしてただけ」
『お前いつも窓から外の空気吸い込んでんじゃねえか』
「うっさいなあ今から勝部先輩見るから話し掛けないで」
『俺も真奈美ちゃん読むから話し掛けんなよ』
「きめえ禿げろよ」
『ゴリラ顔になってろばーか』
結果、アオが帰ってきたのにアオがいなくなる前のありきたりな日常に戻る。
風船ガムを割る音、少女漫画のページを捲る音、たまに飛んでくる罵声。