「う、わ!」
『擦ったらだめなんでしょ、知らないけど』
「ぬっる!気持ち悪っ!」
『・・・ハルは俺の優しさをなんだと思ってんの!?』
目に当てられたペットボトルはやっぱりぬるくて、お世辞にも腫れが引くなんて思えない。
でも、アオの不器用な優しさに思わず嬉しくて笑ってしまう。アオは笑われたことに舌打ちをしながらキレている。
「アオ」
『あ?もうハルには一生優しくしねやんねー』
「──ありがとう」
『、』
色んなものを含めて全部、たったこれだけを告げる。どうしてかアオには素直になれなくて、上手く言えないけれど。それでもこれだけはちゃんと言わなきゃいけない。
言ったはいいが、やっぱり何処か恥ずかしさとアオの反応が怖い。隠れるようにぬるいペットボトルを目に当てたままの私は、隣から応答がないことに不安になる。
ペットボトルをそろそろと下ろしてアオの様子を伺う。アオは驚いた顔をしたまま私を見つめて固まっていたが、その耳はほんのりと赤かった。
「・・・照れてんの?」
『ッは?いやいやいやいやなんで俺がハルに照れなきゃいけないの。そりゃ真奈美ちゃんに「ありがとう」って言われたら3日は興奮して眠れないけどハルに言われてもカラスの鳴き声と同じだから』
「はあ?耳赤くして何言ってんの」
『日焼けに決まってんだろばーか!自惚れんなよ』
ギャンギャンいつもの言い合いが始まる。そのまま下駄箱に辿り着いた私達は待ち構えていた学年主任に取っ捕まり、説教を食らうのである。