『─────悪魔だよ』
「・・・あく、ま?」
『もしもわかってたらの話ね。俺の話なんてどうでもいいから応援しなよ』
くす、と笑ってアオは微かに怯えるように私から視線を逸らして境界線を張った。もう私は踏み込んじゃいけない。これがアオとの壁。
「・・・今だってもう私は悪魔だよ」
『え?』
「なんでもない」
言い逃げするようにそれだけ呟いて。私を見つめるアオを無視して応援に集中した。
「うっ、・・・うばわあっ!あああっ・・・ッ」
『泣き方気持ち悪いし、帰りハルが漕ぐって言ったじゃん』
「ごぐよぉおおお・・・!漕ぐけど、涙で前がッうわあああああっ、うぇっ、うっ、」
『俺、先に自転車で帰ってもいい?』
会場からの帰り道、自転車を押しながらおんおん泣く私。その隣でアオは耳を塞いで私の顔面を汚い物を見る目で見てくる。
結局、勝部先輩の次の次のバッターが三振して試合は終わった。現実を受け入れられない私は、唇を噛み締めて泣くのを堪える勝部先輩を見てあえなく涙腺は決壊。
あまりにも大泣きするものだから、周りの視線が集中してしまった。そんな私をアオが慌てて引っ張って会場を後にしたのである。
『もういい加減泣きやめよー。学校着いちゃうよー。俺が泣かせてるみたいじゃん』
「うぅっ、・・・アオに泣かされることは、絶対ない」
『何それ腹立つ』
鏡を見なくてもわかるほど目が腫れている。ヒリヒリして、きっと真っ赤になっている。制服の袖で涙を止めるためにゴシゴシしようとすれば、隣からペットボトルが目に当てられる。