応援しているだけの私が心臓はち切れそうなのに、勝部先輩は今、どれだけ心臓が痛い思いをしているのだろう。
勝部先輩、頑張れ頑張れ、頑張れ!どうか神様、お願いします。
先輩が打つことだけを、ただそれだけを、ずっと必死に、願う。アオも隣で黙ったまま、真っ直ぐと真剣な面持ちで勝部先輩を見つめている。
ストライク。ボール。ボール。ストライク。ボール。
3ボール2ストライク。
ルールはやはりよくわからない。けれど、そんなことは関係ない。周りの空気で、次の1球に掛かっているのだと思い知る。
泣きそうになって、怖くて、勝部先輩のことを想うと尚更苦しくなって、願うことしかできない自分が情けなくなって、思わず目を閉じそうになった瞬間、
『ハル、ちゃんと見ろ』
「!」
『あの人の努力を見届けろ』
ぎゅ、と握りしめた両手の上に大きな手が重なる。アオの優しくて熱い手。それと同じくらい強く凛とした低い声がアオから落とされた。
私は歯を食いしばって唇を結び、勝部先輩を見つめる。投手が放ったボールに、勝部先輩は迷うことなくバットを振り抜いた。