走り出した、はずなのに。
『ちょ、は、ハル、速い・・・!』
「はあ!?アンタまだ下駄箱にも辿り着いてないけど」
『廊下・・・っ全速力きっついゲホッ、うえ』
「置いてくわ」
『ああああああああ、やめっ、はあ、』
下駄箱に向かうまでのダッシュで何故か息切れするアオ。舌打ちを連発すれば弱々しいパンチが飛んでくる。もちろん空振りだ。
下駄箱で靴を履き替え、走り出そうとした私にアオが慌てて残り少ない体力を削って首根っこを掴んでくる。
『チャリ、借りる』
「了解」
駐輪場に向かい、故原くんのチャリに乗ったアオはさっさと漕ぎ出す。走らなくていいのが相当嬉しいのかとても嬉しそうな顔をしている。
『じゃ、行くか』
「え、私まだ、」
『ハルは走ればいいだろ』
「は?」
アオはさっさと校門に向かって自転車を漕ぎ出す。苛立ちと焦りからアオを追いかけて極めて強引に荷台に乗る。
アオは乱れまくる自転車に慌ててバランスを取りながら悲鳴を上げて私を睨みつける。