設楽会長大丈夫そうだし、何かあるまではこのままホラーを観ることを専念しよう、と私も画面を見つめる。
生まれながらにしてホラーは全く怖くないので、後はびっくりシーンだけ気をつければいいか、なんて思っていれば。
『ハルあの人絶対お化けだよね』
「いや主人公お化けとか意味なくない?」
『あれだろあの小さい子呪うんだろガキンチョ逃げろあああうやああ・・・!』
「いやあの女の子がお化けな」
『え?ぎぃやああああ!』
頑張る設楽会長と比べて私の腕にすがりついて身を縮めながら、私の手で自分の顔を隠して隙間見するアオはもう予告でやられている。ほんとクズヘタレカス。
「はあ・・・あのさアオうるさいし、怖いの駄目なら部室戻っていいよ?」
『はあ!?おっ、俺に1人でここ出て、1人で、ぶし、部室に居ろって言ってんの?てかこ、こ、ここ、こわっ、怖くなんかねーし全然別に、うん』
「なんで今更強がる?」
『強がってませんけど?平常運転で、きゃああああでぇたぁああああ・・・ふがっ!』
もう隣でうるさいのでアオの口を掴まれていない腕の方で思いっきり鷲掴みにして黙らせる。
必然的にアオに身体に向けることになるのだが、アオはやっと私の顔をまともに見たのか泣きそうな顔を更に歪ませた。
『やまいも・・・!』
そう言って脇目もふらず私に抱きつく。一瞬身体が揺らぐが、男だが華奢なアオなので力を入れれば難なく受け止められる。
アオの後頭部がちょうど私の顎らへんにあって、ふわりとシャンプーの優しい香りが鼻腔をくすぐる。
「・・・いや、やまいもって何」
『家で飼ってる猫』
「は?私やまいもじゃないんですけどてか暑い!」
『可愛いんだよ、やまいも。ハルに似てる』