止まらない喧嘩に飽きたのか。幼稚なやり合いに飽きたのか。喧嘩なんて見慣れているのか。故原くんはポケットに手を突っ込んでこちらに声を飛ばした。
『今更なんだけど、どうして春井さんは紫春のこと“アオ”って呼ぶの?』
すると、私の親指でブタッ鼻にされたアオが反応する。痛そうに顔を歪めながらも私の顎を思いっきり押しながら故原くんに向かって叫ぶ。
『こいつ馬鹿だから“青井”のイントネーションがわかってねーんだよ!』
「それはお前がおかしいんだっつーの」
『はあ?代々青井家やってんのは俺なんですけどー』
「アンタが代々やってるわけじゃないじゃん」
『“青井”って語尾下げてほしいのにいつまで立っても上げてくんのが悪いんだろ!』
アオは故原くんに返事をしていたはずなのにいつの間にか私との言い合いに変わっている。私も躍起になって思い切り言い返す。