私の声を遮った少し怒気を孕んだ山吹先輩の声。その声は私達に向けたというよりも、まるで自分に言い聞かせているように感じた。
『親には会社を継ぐようにって反対されるし、俺は昔から人前で話すのが得意じゃない上に、教師になりたい理由も曖昧で、周りと比べて些細だし、例えなったとしてもそんな教師に教わる生徒が可哀想だ』
苦しそうに、でもどこか諦めたような声。
『それに親父の会社を継げば、将来は安定してるし、わざわざ教師の道を選ぶこともないなって』
『ふーん、そうなんすねー』
珍しくアオは話を聞いておいて適当に相槌するだけだ。だけどそれに代わって私が不服全開で山吹先輩を見つめる。
山吹先輩が私の痛い視線に気づいて、瞳を合わせてくる。が、唇を尖らせて不服そうな私の顔に山吹先輩は苦笑いをしながら逃げようとする。
「それで、山吹先輩は幸せなんですか?」
『・・・それはそうだよ。将来の心配をしなくていいし、安定してる』
「なるほど・・・じゃあ保障された人生が幸せって言うなら、私は不幸でいいかな」
私の言葉に山吹先輩は訝しげな顔をする。隣のアオは興味なさげだがその頬は楽しそうに緩んでいる。