『ハルの優しさってかなり邪魔』

「・・・なにそれ。そんなんだから弱い子がいつまで経っても報われないんじゃん」

『いつケンタが弱いっつったよ』

「え?」





アオは私の横を通り過ぎてケンタくんの隣に立つ。ケンタくんは未だにしょぼんとしたままだ。




『俺はアイツらもケンタも同じように扱ってる。それの何が悪い』

「そ、れは、」

『過保護に守ってやるのが“優しさ”ならそんなの要らねーって言ってんだよ。ケンタは逃げることしか出来なくなる』





黙り込む私を見据えて、アオは軽くケンタくんの頭を優しく叩く。それに顔を上げるケンタくん。



アオは土の上に胡座をかいてケンタくんと視線を合わせる。真っ直ぐと彼を見つめたまま言葉を大切そうに紡いだアオ。





『いいか?言わなきゃお前の気持ちはわかんない。言って言い返されたならもっと言い返せ。殴られたら殴り返せ。そんで謝れ。』



ケンタくんはアオの言葉に泣きそうになりながら俯いてしまう。



『で、ケンタが悪くないのに傷つけられたらそん時は俺を呼べ。絶対に助けてやるから』



アオはくしゃくしゃに服を握りしめるケンタくんの手を取って、優しく覗き込む。



『でもケンタ、お前が勇気出してないのに誰がお前の勇気に気づけると思う?勇気は出すもんだ、見せなきゃわかんない』




アオの懇々とした声にケンタくんが大きな瞳に涙を溜めて顔を上げる。それにアオは嬉しそうに微笑む。