『俺は絶対レッド。レッドしかやらねえ』

『シハルしつけーよ!だったらジャンケンな!』

『はっ、お前らより何年長くジャンケンやってっと思ってんだ?』

「あのさアオこの子も、」





入れてあげて。と言う前にジャンケンはもう既に始まっていて私は呆れて溜息をつく。



私は服の端をぎゅっとして唇を尖らせて黙り込んだままのケンタくんの前にしゃがみこむ。ケンタくんはおどおどしながら私と視線を合わせる。



ケンタくんに微笑みながら私はその小さな肩に両手を置く。彼が逃げないで私の目を見つめてくれるようにじっとその目を見つめたまま。





「ケンタくんはワルモノが好きなの?」





ケンタくんは私の問いかけに視線を斜め下に落として何も言わなかった。けれど代わりに首を横に小さく振る。それを否定と受け取って言葉を続ける。





「じゃあどうしていつもワルモノをやってるの?」

『・・・ボク、弱いから』

「弱い?」

『ヒーローにはボクはいらないんだって』





純粋な悲しみを含んだ言葉に胸が痛くなる。こればかりは放っておけないと彼らに言おうと立ち上がって振り向けばどうやらジャンケンが終わったらしい。



落ち込んで一旦座り込む男の子達と違ってドヤ顔しながらこちらに来るアオ。私はそんな馬鹿なアオに容赦なく怒りをぶつける。






『俺、レッドになっちゃったー。さっすがー』

「はあ?それどころじゃないでしょ。なんでケンタくん入れてあげないのよ」




そう言うと、アオは眉間にシワを寄せて私からケンタくんに視線を投げる。





『だったらケンタは“ヒーローがやりたい”って言ったのかよ』

「ワルモノやりたい子なんているわけないでしょ?そんなのすぐわかるじゃん」

『そんなの知ったことかよ。なんにも言わねーし、言い返さねーからワルモノにされんだろうが』

「はあ?子供相手になんでそんな容赦ないの?優しさってもんがないの?」





ブチ切れる私にアオも負けじと言い返してくる。けど、私と違ってアオは感情では動いていない。あくまで淡々とした声で。それに尚更悔しくなる。