『つーかさあ、ジャンケンで勝ったからってその子と隣になれんの?』
『実は、その子がいつも狙ってる席あるの知ってて』
「当てられるよ私。窓際1番後ろの席でしょ?」
『ハルそれ典型的な内職目当てか睡眠目当てな奴が狙う席だから』
バシ、と軽く私の後頭部を叩くアオは呆れ顔である。誰だってあそこの席を狙うに決まってるのに。
『窓際の1番前の席だよ。だから俺はその隣に行きたくて』
「1番前?真面目なんだね」
『目が悪いみたいだし、勉強もできる人だから』
『つーかそれ、別にジャンケンボーイが頑張んなくても隣になれんじゃね?』
「・・・・・・」
『・・・・・・』
「確かに」
1番前の席なんて、不人気まっしぐらだ。望まなくとも負け続けば必然的に確保することも十分可能である。
しかし、納得しかけていたジャンケンボーイが慌てたように首を振って、私達に意志をぶつける。
『俺は成り行きじゃなくて、自分から望んで選んで、彼女の隣に行きたい』
『イケメンかよ』
「アオよりは確実にイケメン」
『ごめんそこは俺のがイケメンだと思う』
「そういうとこだよお前は」
グニィ、と真顔のアオの頬をつねり上げる。アオは眉間にシワを寄せると私の頬を思いっきり引っ張ってくる。