アオは私に噛まれた腕を擦りながら睨みつけてくる。その目に薄く涙の膜が張っているのだから相当痛かったのだろう。
「ねぇ、応援しようよ。ジャンケン1つで人生決まっちゃうかもしれないんだよ」
『それはそれはスリリングな人生でして』
「はあ・・・、なんでそんなに応援したくないの?元々心ちっせーのは知ってたけどさ」
『おいこら一言余計じゃない?』
アオは死んだ目のまま唇を尖らせて、ジャンケンボーイに辛辣な視線を投げかける。それさえも軽く魅力的なのだからいっそ消え果てて欲しい。
『だって絶対ジャンケンボーイくん両想いフラグじゃん』
「え?いいじゃん素敵じゃん」
『俺が幸せになれてないのに、幸せになりそうな奴の背中なんて押したくねー』
「うわあドン引き。どこまで心狭いんだよ」
『うるせえ。だったら今すぐここに真奈美ちゃん召喚してください』
私たちの言い合いに1人ぽつん、と座るジャンケンボーイがゆったりと手を挙げる。挙手制になったのか、なんて思いながら私もアオも彼を指名して黙る。