『あ?なんだって?』
『だ、だからジャンケンが強くなりたい・・・!』
『はい帰って下さいここは幼稚園じゃありませーん』
泣きそうに制服のズボンを握り締める小麦色の肌をした男子生徒。彼を情もなく見捨てたアオは少女漫画を読み始める。
私は隣のアオをぶん殴り、彼に向き直る。パチ、とアオの風船ガムが割れた。
「聞き方が悪いんだよ。ここは、真面目に真剣に悩んでる人が切羽詰まって依頼にくるんだよ!?真面目に聞いて」
『いった、あー、頭の骨にヒビ入った慰謝料500まんえーん』
「もう1回くらいヒビ入れれば黙るかな」
『ごめんて冗談だって』
アオは痛そうに頭を抑える。私がアオから男子生徒に視線を流せば、何故か彼もアオと同じように頭を抑えていた。その顔はまるでアオの痛みも疑似体験しているように歪んでいる。
「それで?依頼は?」
『あ、あの、』
「ん?」
『じゃんっ、じゃ、ジャンケンが・・・強くなりたい!!!』
「アオ、早くコイツここからつまみ出しといてー」
『おーい待てー。俺は単なる殴られ損ですかー』
内容を改めて聞いて態度を手のひら返しする私。それに悲しそうな悲鳴を上げる目の前の彼と、隣で私を半目で睨みつけてくるアオ。確かにアオは私に殴られただけだった。