「…………へ?」


たっぷり5秒くらいはフリーズしてから、私は間抜けな声とともに顔をあげた。

瞬間、高田くんの柔らかい眼差しに包まれる。


「つまりね、何が言いたいかというと」

「……うん」

「人間っていうのは、こういう人がいいなっていう理想像どおりの人を、好きになるとは限らないわけで」


高田くんの口調は真剣だった。


「俺は、加藤さんを好きになって初めて、今までの自分の恋愛観を塗り替えられたんだよね」


まっすぐに向けられた言葉が、ひとつひとつ、耳のなかに忍び込んでくる。


『俺は』、『加藤さんを』、『好き』。


「………えっ」


やっぱり間抜けな反応しかできない自分が情けない。


高田くんが、私のことを、好き?


どくっと心臓が跳ねて、それからばくばくと暴れ出した。

胸が苦しくなって、息が吸えなくなって、顔が熱くなって。


何も言えずに固まっていると、高田くんがいきなり手を伸ばしてきた。

それから、ぽんっと頭の上に手がのせられる。


「まあ、そういうことです」

「………」

「で、あわよくば、加藤さんもそうだったら嬉しいな、と」

「……え、え」