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次の日の朝、いつもより早い時間に登校して、いちばんに桜の木を見に行った。
「……あった!」
思わず、上ずった声が出た。
あるかもしれない、と期待しつつも、ないだろうな、と半分諦めてもいた。
吉岡さんじゃないと、筆跡でばれてしまうかもしれないから。
だから、控えめに置かれた白い封筒を見つけたときは、泣きそうなほど嬉しかった。
封筒を手に取り、中から便箋を取り出す。
白いものがふわりと舞った。
たんぽぽの綿毛だ。
そのまま風にのって、ふわふわと漂いながら流れていく。
彼はまた、春を贈ってくれた。
嬉しくて嬉しくて、ふふっと笑みがこぼれる。
唇ににじむ笑みを自覚しながら、私は便箋を開いて、やっぱり丁寧につづられた文字を目で追った。
『返事をくれてありがとうございます。
桜のポスト(と勝手に名付けます)に君からの手紙が入っているのを見たとき、世界が変わったんじゃないかというくらい幸せな気持ちになりました。
文通を受け入れてくれて本当に嬉しいです。
これからよろしくお願いします。
追伸
君が同封してくれた菜の花の写真、とても綺麗で感動しました。
素敵な春のおすそわけをありがとう』