彼はまっすぐに私を見つめて言った。


澄みきった、とてもきれいな瞳。

思わず見とれてしまう。


「君のこと、好きになったから。だから、せめて手紙だけでもつながってたくて」


好き、なんて言葉を言われたのは初めてで、途端に心臓が暴れだし、顔が火照ってくるのを自覚する。


でも、次の瞬間には冷静になった。

頭から冷水をかけられたように。


勘違いしたらいけない。

彼が好きになったのは、吉岡さんのことだ。


ふうっと息を吐き出して、唇を開く。


「……ごめんなさい。私、吉岡さんじゃないの」


一気に言うと、彼はきょとんとしたように目を見開いた。


ああ、びっくりしてる。

やっぱり、そうなんだ。

私が吉岡さんじゃないってこと……。


「………え? うん、知ってるよ」


今度は私が「え?」と言う番だった。


「俺、吉岡さんの顔、知ってるし」

「え、え……」

「ほら、木佐貫が吉岡さんのこと好きだったから。あいつが見るから俺も自然と顔覚えて」

「……え、じゃあ」


じっと彼を見つめ返していると、彼はふっと目を細めて笑った。


「俺が好きになったのは、君だよ。綺麗な写真をつけて手紙を送ってくれた、君」


言葉が出なかった。