廊下を駆け抜けて、生徒玄関に飛び込んで、しゃがんで靴箱からローファーを取りだし履き替える。


それから校舎の外へ飛び出して、校門に向かって全速力で走った。


二人の背中が見えてきた。


「――木佐貫くん!」


自分でもびっくりするくらいの大声が出た。

二人が驚いた顔で振り向く。


私は、はあはあと肩で息をしながら、彼に向かって頭を下げた。


「……ごめんなさい! ずっと、騙してました……」


しいん、と静まり返る空気。

木佐貫くんも、隣の彼も、周囲にいたたくさんの生徒たちも、みんなが唖然として私を見ているのが気配で分かった。


私はそろそろと顔をあげて、木佐貫くんを見る。

彼は目をまんまるに見開いて、硬直したように私を見ていた。


そうか、彼は私の顔を知らないんだ、と気がついて、私は慌てて、


「あの、手紙!」


と口を開く。


「桜のポストの手紙……私が書いてました。吉岡さんへの手紙も、勝手に、読んで……ごめんなさい」


言いながら、声が震えてくる。


「本当に……ごめんなさい。ずっと、嘘ついてました……」


ああ、もう、終わりだ。

絶対に、嫌われる。

こんな最低なことをしてしまった私を、誠実な彼はきっと心底軽蔑するだろう。


泣きたい気持ちを必死に押さえていると。


「……桜のポストの手紙? ……ごめん、なんの話?」


木佐貫くんが困ったように笑いながら首をかしげた。