颯太くんはわたしには背中を向けていて、表情は見えなかったけど、「おまえら、うるさいぞー」という声が、その騒ぎを嫌がっていないことだけはわかった。

「颯太は団長だから、特別なんだよ! ね? 理緒!」

えれなはわたしが作ったはちまきを自分が作ったようになってしまったことに、気兼ねしたのだろう、わたしに声をかけてきた。わたしは「いいから」という顔でえれなに目配せした。
   
もう時間がない。どんどんやるべきことをやらなくては。

「えれな、みんなに衣装一回着てみるように言ってくれる?」

「わかった! ちょっとみんな! 衣装、着てみて!」

「はいよー、ほらみんなちゃっちゃっとやっちゃおうぜ」

えれなが仕切りだしたら、とたんにみんな動きだす。
仕切りはえれなにまかせて、わたしは最後のチェックをはじめた。
これでいい。これでいいんだ。

一瞬でも勘違いした自分が恥ずかしくて、みじめだった。

颯太くんとわたしのことを、みんなが勘違いするはずがないのに。

みんなの中心にいるのはいつだって、太陽じゃなきゃ。
明日ですべてが終わる。これでわたしのやるべきことが無事に終わってくれれば、それでいい。