翌日、いつものようにえれなと一緒に登校した。
えれなは朝から元気で、昨日結局あのあとにチア部の仲間と行ったカラオケの話をしてる。

「理緒もくればよかったのに」

「カラオケは苦手」

「えー、昔よくいったじゃん」

「……小学校のとき、家族ぐるみで一回行ったきりでしょ」

「あれ? そうだっけ?」

 そんな話をしながら、学校の門の中に入ったときだった。

「おはよう」と肩を叩かれ、振り向くとそこに紺野颯太が立っていた。

「おっと」

驚いたわたしが立ち止まってしまったせいで、紺野颯太とぶつかってしまった。よろめいたわたしの腕をとっさに掴んでくれたけれど、わたしはあわててその手をふりほどいた。

「お、おはよう」

せいいっぱい冷静を装って返事をしながら、歩きだした。紺野颯太はわたしの左側に並んで歩く。でも、右側にいるえれなが不思議そうにこちらを見るから、なんだかどんどん焦ってしまう。

「昨日、ごめんな」

「え?」

「俺、邪魔したかなと思って。真剣に写真とってたのに……」

その言葉に思わず「全然大丈夫!」と大きな声をあげた。インスタグラムのことをえれなには言っていないから、写真のこととかあまりここで話したくない。

「え? なに、写真って?」

案の定、えれながたずねてきた。

「なんでもないの。昨日、ちょっと桜がきれいだったから、撮ってただけ」

「桜? もうほとんど散ってるのに」

「そうなんだけどね」

えれなと話しながら、苦笑いするわたしを紺野颯太が反対側から見ているのがわかって、落ち着かない。