アルバイトがあるからと言って、六時前に渡辺さんは帰っていった。

それでも渡辺さんのおかげで法被はなんとかできあがった。わたしはやれるときにできるかぎりやろうと、はちまきの仕上げをはじめた。

数時間ずっとミシンに向かい合っていたせいで、肩と背中ががちがちになっていた。その上針仕事をしていたら、目がちかちかしてきた。ここ数日は家に持ち帰って作業していたから、睡眠不足の日が続いていて疲れがたまっていた。

わたしは少し休もうと目を閉じ、作業机につっぷした。少しだけ休憩するつもりだったのに、深い眠りにひきずりこまれてしまっていたようだった。。

どれくらい時間が過ぎたんだろう。

「理緒! 理緒!」

 揺さぶられて目が覚めた。一瞬自分がどこにいるのかわからなかったけれど、目の前にいるのが颯太くんだと気づいた瞬間、眠気がふっとんだ。

「なに?」

「なにじゃないよ。もう八時だぞ」

「え? もうそんな時間?」

少し休憩のつもりのはずが、三十分近く眠り込んでいたのだった。
もう学校からでなくてはいけない。もう少し終わらせようと思っていたのに……、思わずため息をついたら、それと同時に盛大にお腹がなった。

颯太くんが笑い出す。

「なんか食いにいこうぜ。俺も腹減った」

「……いい。大丈夫」

わたしはそういうと、片付けはじめた。居眠りしてるところを見られて、お腹が鳴ったところまで聞かれて、恥ずかしくてしょうがなかった。ここからすぐにでも逃げ出したいくらいだ。