きっとえれながリーダーで指示をだしていたら、みんなもっと集中して気合いをいれてやっていたんだろう。わたしにだったらいくら尻拭いさせてもいいって無意識のうちにそんな風に思って、気が緩んじゃうんじゃないかなって思った。

まちがって仮縫いされたものをほどいて、また縫ってという作業は意外と手間がかかって、わたしはもうすべて自分でやったほうが早いなとどこかあきらめにも似た気持ちになってしまう。

もともと人にお願いしたり、指示を出したりするのが、苦手なのだ。うまく伝えられなくていらいらするくらいなら、自分でやったほうがましだ。

今日はわたしたちだけで家庭科室を使える最後の日だった。だから、なんとしても法被は縫い終えてしまいたい。

渡辺さんはミシンも楽々と使いこなすので、一緒に作業してくれると本当にありがたかった。

「応援団長も衣装係のリーダーも、ひとりで抱え込むタイプだな」

隣でミシンをかけながら渡辺さんが言った。

「え」

「颯太もいろいろ悩んでるみたいだよ。僕も声をかけてはいるんだけど、意外とあんまり話してくれないんだよな。信頼されてないかな」

意外だった。颯太くんなら、悩みとかどんどんオープンにして、みんなに話を聞いてもらって、解決していくタイプだと思ってたから。

「理緒ちゃんもあまり言わないタイプだよね。衣装のことだって、こんな状況なのにひとりでなんとかしようとする」

そう言われて、わたしは少しあわてた。