六月に入ると、学校全体が体育祭に向けて落ち着かない雰囲気になった。
衣装作りも佳境に入った。

わたしは毎日のように家庭科室に通い、衣装を作り続けた。法被の型紙をつくり、団員ひとりひとりに会わせて少しずつサイズを変えて、布を切り取っていく。

えれなも気を使って声をかけてはくれるのだが、チア部の練習で忙しそうな様子を見ると、なかなか衣装のために集まってとは言いづらかった。

それでも、さすがに仮縫いくらいは手伝ってもらおうかと、パーツごとに切った布と説明書をそえて、週末の宿題という形でえれなたちに渡した。でも、仕上がってきたものを見て、わたしは少し後悔した。

なぜか袖の部分まで縫い合わせられていて腕が入らない、とか袖と身頃の付け方が逆だとか、わたしにしてみたらあり得ない状態で出来上がってくるのだ。

「ひどいな、みんな」

一緒にチェックしていた渡辺さんが、あきれていった。

いつもひとりで作業しているわたしを見かねて、渡辺さんは空いてる時間に手伝いに来てくれていたのだ。

「わたしの説明が悪かったのかもしれないです」

「いやいや、腕を通すとこだってことくらいわかるでしょ、ふつう」

でも、わたしはそれほど怒る気にならなかった。
これをやった子も悪気なんてなかったんだろう。

なんとなく、みんなわたしがリーダーだから適当にやったんだろうなってそんな風に思っていた。