えれなの声が嬉しそうに一段明るくはねた。恋してるんだなってことがすぐにわかる、かわいらしい女の子の声だった。

そんなえれなが心からうらやましいと思う。こんな風に素直に自分の気持ちがを表現できてしまうえれなが。

「なんか、まだ自分でもよくわかんないの。でも、ものすごく好きになっちゃいそうな予感があって、つい颯太のこと目で追っちゃう」

「うん」

「そしたらさ、しょっちゅう理緒と話してるじゃない。だから、あれ?って、もしかして知らないうちにふたりって付き合ってるのかなって、気になりだしたら、なんだか苦しくて」

わたしからしたら、あまりに突拍子もない勘違いだけど、それくらいえれなは颯太くんに恋してしまったってことなんだろう。

受話器を通しても、えれな自身ががそんな自分に戸惑っているのが伝わってくる。
恋ばなはあまり得意じゃないけど、えれながあまりに微笑ましくて、いくらでも聞いてあげられると思った。

「わたしと颯太くんが付き合ってるわけないでしょ。だいたいあんな人気者が、わたしなんかとつきあうわけないじゃない」

「え、なんで? わたし、理緒がライバルだったらあきらめるしかないって思って…」

「なに言ってんの。えれなってば、嫌みだなあ」

「なんでなんで。わたしが男だったら、わたしみたいなのより、理緒みたいにしっかりしてる女の子がいいと思うもの、絶対に」

そのえれなの言葉はお世辞ではないのもわかった。えれなは本当にそう思ってくれているのもわかる。でも現実はまったく逆で、ほとんどの男の子がわたしではなく、えれなを選ぶ。