「なに?」
めずらしく颯太くんが驚いた声を出したけど、わたしはかまわずにスマホをかまえた。
「さっきのやって。『ひとつになろう』ってやつ。本番みたいにぴしっと」
「お? おお」
わたしの真剣さにおされて、颯太くんが指を「1」の形にする。
颯太くんの指がつくる「ひとつになろう」というメッセージが、雲ひとつない青い空を突き刺すようにそびえ立つ。
「ちょっとだけそのままで」
わたしはスマホを取り出すと、すこししゃがんであおりぎみで写真をとった。
逆光ぎみで指が影になる。お昼どきの真上から降り注ぐ太陽の光をうまくかわして、颯太くんの指をきちんととりたい。
どの角度が一番ベストか、少しずつポジションを変えながら、シャッターを切っていく。
団長である颯太くんのメッセージを、みんなにきちんと伝える写真にしなくちゃ。
わたしはそれだけを考えて撮影して、何回も何回もシャッターをきった。
「ありがとう。もういいよ」
撮り終わると、颯太くんは笑い出した。
「理緒は写真とるときだけ、がっつくな。ちょっと人がかわる」
「そ、そんなことないよ。Tシャツのことがあるから、必死なだけで」
つい言い訳口調になるわたしを、颯太くんが笑って見ていた。
「けなしてるわけじゃないよ。面白いって言ってんの」
「面白いって……」
わたしはまた恥ずかしくなった。
そのとき、午後の授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。