「やだ」

腕を組んで、眉間にしわを寄せて考えながらも、みょうにきっぱりと颯太くんは言った。

「写真プリントでいく。それより、なにかいらないものがあるはずだ」

「え…、でもまだ写真いいのが撮れてないし……」

「じゃあ、早く撮って、いい写真」

「そんな簡単じゃないよ」

わたしは少しむっとした。

「約束したじゃん。理緒はそんな簡単に約束やぶるんだ」

颯太くんもわたし以上にむっとした顔で言った。

「約束なんてしてない……」

反論しながらも、わたしの声は小さかった。
たしかに、一緒に手芸店に行ったあとにお茶をしながら、わたしは「撮る」と宣言したことを覚えていた。

「したね。絶対にした」

颯太くんは言いながら、わたしが見せた予算書のある項目を指差した。

「これ、やめよう」

それは扇子だった。演舞のときの小道具として、青一色の地色に、白抜きで何かメッセージをいれて扇子を作ろうとしていたのだ。

「でも、小道具ないとさみしくない? 多分ほかの軍もみんな用意してるよ」

わたしの言葉に颯太くんはにやりと笑う。

「他の軍と同じことやってたら、ダメでしょ」

「……」

「小道具とか、なくて大丈夫。俺たちの身体ひとつで、もりあげられるから」

颯太くんは自信満々にそう言った。
それでもわたしは心配だった。ほんとにそこまで写真プリントにこだわる必要あるのかな。

業者さんへのオーダーの締め切り日までに、わたしはいい写真を撮ることができるのだろうか。